──三日目。
廊下ですれ違ったとき、神代さんに声をかけられた。
「顔色が優れませんが、体調は大丈夫ですか。」
心配してくれている。それは分かる。
でも…神代さんと話す叶兎くんはどこかリラックスしているように見えた。
普段、他人に対して、特に女性には壁を作るあの叶兎くんが。
……別に、変なことなんて何もないのに。
──四日目の朝。
ダイニングに降りると、神代さんが一人でコーヒーを飲んでいた。
「……おはようございます。」
「おはようございます、朝宮さん。よく眠れましたか?」
「……はい。」
嘘だった。
昨夜は、ベッドの中で天井を見つめていた時間の方が長い。
隣に叶兎くんはいなかった。特警絡みで呼び出しがあったのだ。
「赤羽さんなら昼過ぎには戻られるとのことです。何かあれば連絡を、と。」
「……そう、ですか。」
胸の奥がちくりとした。
桜が朝食を運んでくる間も、神代さんは静かに資料を読み続けていた。
会話が途切れて、気まずくはない。
……ただ、ひたすらに遠く感じる。
「胡桃様、今日はパンケーキですよ〜!」
「……ありがと、桜」
甘いはずのパンケーキが、なぜか味がしなかった。


