「それは後で俺から共有する。今は訓練の件を先に詰めたい。」
「……了解です。では訓練日程ですが──」
神代さんがタブレットを操作し、スケジュール表を表示した。
叶兎くんは同時に画面を覗き込む。
二人が一点を見つめて話し合う光景は、完成された「仕事のパートナー」のようで。
………私の手は、必要ない仕事、だよね。
訓練までの数日は、驚くほど慌ただしく過ぎた。
──神代さんが来た初日。
彼女はどこまでも完璧だった。
屋敷の間取りを一日で把握し、死角を潰し、生活動線に自然に溶け込んだ。
特に危険が起きているわけでもないので護衛というより…有能な秘書のよう。
「朝宮さん、お茶をどうぞ。」
「あ、ありがとうございます……」
──二日目。
リビングで叶兎くんと神代さんが並んで資料を読んでいた。
神代さんの指が叶兎くんの持つペンを示す。
「こちらの数値、修正済みです。」
「……ん、助かる。」
特殊警備隊が絡む事案は、神代さんが直接対応した方が早い。
…でもそうなると、必然と私の仕事が取られたような気分にもなる。


