総長は、甘くて危険な吸血鬼 Ⅱ




「いや、別に。もう終わったし。」

「どこがだよ。」



この叶兎くんと時雨くんのやりとりももはや日課だ。

神代さんはコホンと咳払いを一つして、空気を切り替えた。



「では、業務の話をさせてください。こちらの資料、本日中に目を通していただきたいのですが」



資料を渡された瞬間、叶兎くんの表情が仕事モードに切り替わった。

空気が一変して、さっきまでの甘い雰囲気はどこへやら、彼は資料をめくりながら神代さんと事務的なやり取りを始めた。

その切り替えの速さに、私はただ圧倒されてしまう。



「……ここの警備配置、もう少し詰められる?」

「はい。死角を三箇所潰せます。」



時雨くんは壁に寄りかかって腕組みしながら聞いている。

私はどこか取り残されたような気持ちで、空になったカップを両手で包んでいた。


侵入経路の想定、護衛シフトの時間割り振り、緊急時の連絡系統。二人の間で交わされる言葉は的確で無駄がなかった。



「朝宮さんの行動パターンを把握しておきたいのですが、普段の生活スケジュールを教えていただけますか?」

「……あんまり細かく管理する必要はないよ。基本的には俺がそばにいるし。」

「承知しています。ですが、万が一に備えてです。」



神代さんが私の方を向く。

私が口を開こうとすると、叶兎くんがさっと手で制した。