な、なんでそんなに楽しそうなの……!
叶兎くんはくすっと笑うと、私の耳元に顔を寄せてきた。
「会ったのは今日が初めて。上からの紹介で名前は知ってたけど、それだけだよ」
囁くような声でそう言われて。
ほっぺたをむにっと摘まれた。
「む…」
「変な心配してる顔。かわいいけど…俺には胡桃しかいないから。」
………見透かされてたみたいで恥ずかしくて目を逸らす。
そんな私を見て叶兎くんは満足そうに目を細めた。
頬をつーっと指でなぞるみたいに触れられると、びくっと体が跳ねた。
「……ふ、ホントかわいい」
「っ、もう、からかわないで…!」
「からかってない。事実。」
両手で赤くなった耳を隠してぷいっと顔を背けたけど、叶兎くんの熱い視線は外してくれない。
冷めきった朝食のことは、もう完全に二人の頭から消え去っていた。
そのとき、廊下から足音が聞こえ、時雨くんと神代さんが戻ってきた。
部屋に入ってきた二人の目に映ったのは、真っ赤になって耳を隠す私と、それを見て楽しそうに笑う叶兎くん。
「……失礼しました。タイミングが悪かったようで。」
無表情な神代さんにそんなことを言われ、私は「あわわ」とパニックになってしまった。
穴があったら埋まりたい……っ。


