総長は、甘くて危険な吸血鬼 Ⅱ





「…でも、恋愛相談って……私、何か悩ませちゃってたってたのかな…?」



そう呟くと、桜は少し考えるように間を置いてから言った。



「んー……あれはそういう悩みじゃなさそうでしたけど…」

「ほ、ほんと……?」

「はい」



それでも、どうしても気になってしまう。

叶兎くんに無理をさせたり、困らせたりしているなら、一刻も早く直したい。



「……私に、直せることがあれば教えてほしいです……っ」



鏡越しにすがるような目で必死に尋ねると、桜はふっとドライヤーのスイッチを切った。

静まり返った部屋の中で、最後にそっと私の髪の形を整えると、くすりと楽しそうに微笑む。



「……そうですねぇ。胡桃様は、『心の準備』ができたら、それでいいと思いますよ」

「心の準備……?」

「はい」



それだけ言って、桜はどこか意味深な笑みを浮かべた。



「……そういえば。さっき……叶兎くんも、似たようなこと、言ってたかも……」



私がつぶやくように言うと、桜の手が止まる。



「………え、胡桃様。それ言われて…気づいてないんですか!?」

「気づく…?」

「…これは執事に恋愛相談したくもなります。」

「え、私……何か、変なこと言った……?」

「いいえ。胡桃様は、叶兎様に本当に、すごーく大事にされているんですね」



桜は満足そうに微笑んだ。

髪の手入れを終えて扉の前まで見送られ、最後に一言。



「心の準備は──身も心も全部捧げるって意味の、心の準備だと思いますよ」



ぱたん、と扉が閉まる。