顔を上げると、そこには黒髪をきっちり一つに結い上げた、一分の隙もない立ち姿の女性が立っていた。
特警の制服を凛々しく着こなした彼女の手には、最新型のタブレット。
この人は特殊警備隊でも数少ない女で幹部の── 神代雪那。
俺たちと年はさほど変わらない。
ただ、一度だって彼女が心の底から笑ったところを見たことがない。
何を考えているのか読ませない、まさに鉄の女。
「栗栖天音、九条秋斗、蓮水永季。来週からの配置変更を伝えに来た。」
室内の空気が、一瞬でマイナス十度くらいに冷え込んだ。
だらけていた俺もさすがに姿勢を正し、秋斗は無意識に背筋を伸ばした。
「……え、配置変更?」
神代さんは感情の籠もらない瞳でタブレットをこちらに向ける。
「私は明日付で本部屋敷に異動になる。赤羽叶兎の補佐兼、朝宮胡桃の護衛。」
「……は?」
胡桃ちゃんの護衛?神代さんが??
「……護衛って…何かあったのか」
秋斗が呟いた。当然の疑問だ。


