……何であの時、撃たなかった。あの場で始末しなかった。
冷え切った缶を頬に当てる。
考えがまとまらない時、熱くなった頭を冷やすための俺の悪い癖だ。
…撃てなかった、じゃない。
撃たなかった。自分の意思で。
それは俺にとって、初めてに近い感覚だった。
「撃てるのに撃たない」
── そんな甘い選択肢が自分の中に存在していたことに、今更ながら戸惑っている。
天井を仰ぐと、蛍光灯の無機質な白が網膜に刺さった。
……守られてるだけの人間じゃん。
なのにあの目。
……っなんなんだよ。
苛立ちの正体がわからない。
任務を完遂できなかった自分への怒りか。
それとも胡桃が、自分の知る「弱い存在」の枠に収まらないことへの戸惑いか。
空になった缶をゴミ箱に放る。
からん、と乾いた音。
「……次はちゃんとやるよ。」
誰に言い聞かせるでもなく呟いて、その足は、次の任務の資料室ではなく屋上へと向かっていた。


