総長は、甘くて危険な吸血鬼 Ⅱ





……何であの時、撃たなかった。あの場で始末しなかった。



冷え切った缶を頬に当てる。

考えがまとまらない時、熱くなった頭を冷やすための俺の悪い癖だ。



…撃てなかった、じゃない。

撃たなかった。自分の意思で。


それは俺にとって、初めてに近い感覚だった。



「撃てるのに撃たない」

── そんな甘い選択肢が自分の中に存在していたことに、今更ながら戸惑っている。




天井を仰ぐと、蛍光灯の無機質な白が網膜に刺さった。



……守られてるだけの人間じゃん。


なのにあの目。

……っなんなんだよ。




苛立ちの正体がわからない。



任務を完遂できなかった自分への怒りか。

それとも胡桃が、自分の知る「弱い存在」の枠に収まらないことへの戸惑いか。



空になった缶をゴミ箱に放る。

からん、と乾いた音。



「……次はちゃんとやるよ。」



誰に言い聞かせるでもなく呟いて、その足は、次の任務の資料室ではなく屋上へと向かっていた。