総長は、甘くて危険な吸血鬼 Ⅱ





「それに、仕留めなかったらしいな。」

「……あー。あの場でぶっ放したら、…あの子に当たりそうだったんで。二次被害を避けるのもハンターの仕事でしょ?」



動揺を悟られないようできるだけ涼しい顔で、もっともらしい理由を並べる。

じっと無言で見つめられ、背筋に嫌な汗が伝わるのを感じた。



「お前の仕事は『ハンター』だ。慈悲をかける対象を間違えるな。……忘れるなよ」

「わかってますって」



冷たく言い放たれた言葉をひらひらと手を振って受け流し、俺は足早に部屋を出た。

叱責されること自体は慣れっこだ。いつものこと。



ハンターに情はいらない。

冷徹なマシーンとして、害悪を排除する。


……それがこの組織の絶対的な理念であり、俺自身、それを疑ったことなんて今まで一度もなかった。



自販機の前で立ち止まり、百円玉を放り込む。


ガタン、と重い音を立てて落ちてきたブラックコーヒー。

プルタブを開けると、苦い香りが鼻をくすぐった。



「……ハンター、ね。」



暗い庭の隅、月明かりの下で見た朝宮胡桃の顔が脳裏をかすめる。

震える肩。怯えた目。


無意識に、アルミ缶を握る指先に力がこもった。