引っ張られて、バランスを崩した私の上に覆いかぶさる叶兎くん。
あ、と思う間もなく唇が重なった。
「ん、む……っ!?」
不意打ちすぎて目を白黒させた。
すぐに唇が離れると、私は口を尖らせて彼を睨んだ。
「……待ったけど」
「待ってない!!」
「3秒待った」
「それは待ってるって言わないっ...!」
必死の抗議も、上から余裕の笑みで見下ろされると、まったく迫力がなくなってしまう。
叶兎くんは満足そうに口角を上げた。
「……もう一回する?」
「しません!!」
「えー、即答。」
わざとらしく傷ついた顔をしてみせる叶兎くん。絶対嘘だ。
「だ、だって叶兎くんぜったい止まらないから……!」
「よく知ってんじゃん」
「そういうとこ!!」
なんだか、こんなやり取りをずっと前にもした気がする。
おかしくて、愛おしくて、私たちはどちらからともなく吹き出した。
窓の外では、新しい一日の始まりを告げるように、小鳥のさえずりが響いている。
昨日の恐怖も、夜の熱も、すべてを包み込んで。
私たちの新しい一日が、今日も静かに幕を開けた。


