屋敷の中に戻ると、リビングの空気が少し変わっていた。
「あ、おかえり胡桃っち。遅かったね」
「……何か、顔色悪くない?」
……鋭い。さすが時雨くん。
「……大丈夫?風、冷たかった?」
春流くんも、心配そうに私の顔を覗き込んでくる。
「あ、えっと…うん、ちょっと冷えちゃって…!」
努めて明るく振る舞ったけど、時雨くんの射抜くような視線が数秒間、私を捉え続けた。
「……ふーん。……ま、いいけど」
それ以上は追求してこなかったけれど、何かを察したような含みのある言い方だった。
窓の外はすっかり暗くなっていた。庭で灯されたランタンの光がぼんやりと室内に差し込む。
テーブルには食べかけの料理と空になったグラスがいくつか残っていて、昼間の賑やかさの名残がそのまま漂っている。
「……叶兎、まだ帰ってこないね」
「……仕事だもんな。俺も特警に連絡してみたけど、叶兎にしか対応できない案件らしくて、俺らが出る幕はないってさ」
九条くんが不満げに鼻を鳴らす。
「……でも、せっかくの誕生日なのにね。」
ソファに座った春流くんが時計をちらりと見た。
時刻は夜の九時を回っている。
ダイニングの椅子に逆向きに跨って座っていた天音くんが、ふと顔を上げた。

