総長は、甘くて危険な吸血鬼 Ⅱ




「……嫌そうな顔してるね。背中でもわかるよ。」



琥珀の言葉には、嘘偽りのない「人間としての正論」が宿っているのかもしれない。

私の身を案じてくれているのも、本当だろう。


でも、私は──。



「……私、自分の足で立てるから降ろしてほしい」

「……はいはい」



琥珀は素直に足を止めると、ゆっくりと腰を落としてくれた。

地面に足をつくとまだ膝は震えていたけど、自分の意思で立つことができた。



「……で?」



琥珀が振り返り、まっすぐ私の瞳を射抜く。



「さっきの質問、答え聞いてないんだけど。……本部じゃなくて、ハンターの保護下に来る気ない?暴走事件が落ち着くまでの間だけでもさ」



琥珀はきっと優しい。純粋に、真っ直ぐ。

でも…私は、叶兎くんの隣で、ここで生きると決めた。今更迷うつもりなんてない



「……保護してもらう気は、ないよ。でも……助けてくれて、本当にありがとう、琥珀」

「……ふーん」



数秒の間、琥珀はじっと私の目を見つめていた。

…何かを探るように、あるいは諦めるように。



「……その視線も変わんないね。前と同じ」



琥珀は、ふぅ、と小さくため息を吐いた。