「…行っちゃったね」
「…大丈夫かな、あいつ」
春流くんと天音くんが心配そうに呟く。
「叶兎なら問題ないだろう。それより──」
みんなの視線が私へ向いた。
「…しばらくしたら戻るだろ。大人しく待ってろ」
「…うん。それがいいと思う」
九条くんも、朔も、全員の意見が一致していた。今日は休んでいろ、と。
それからはみんなと話をしながら過ごした。
でも、一時間、二時間が過ぎても、叶兎くんが帰ってくる気配はない。
ふと窓の外を見ると、手入れの行き届いた庭の木々が風に揺れていた。
賑やかなリビングも楽しいけど…叶兎くんがいない空席を見ると、なんだか落ち着かなくて。
「ちょっと、庭で風に当たってきてもいい?」
「もう暗いし、それなら俺も──」
時雨くんが立ち上がろうとするけれど、私は首を振った。
「外には出ないから大丈夫!すぐ戻るね」
「…まぁ、それなら平気かな。何かあったら呼んで」
屋敷の庭は広い。手入れの行き届いた花壇の間を抜けると、小さな噴水が見えてくる。
夜風がふわりと頬を撫でた。ひとりきりの静けさが、さっきまでの賑やかさの余韻と混ざって——少しだけ心細い。
噴水の縁に腰掛け、夜空を見上げた。
…叶兎くん、大丈夫かな。
一人で考え事をしていた、その時。
背後の茂みが、ガサリ……と大きく揺れた。

