「…誰、こんな時に」
不機嫌そうにスマホを取り出すと、画面を見た瞬間、叶兎くんの表情から余裕が消える。
「仕事の電話だ………ちょっと待ってて」
叶兎くんは席を立ち、バルコニーの方へ向かった。
しばらくして戻ってきた彼の眉間には、深い皺が刻まれていた。
「…ごめん。ちょっと出てくる」
「「え!?」」
そう言われて、みんなの声が重なる。
「事件。…場所が近いから直接来て欲しいって」
苦々しげに吐き捨てて、コートを羽織る。それから私の前にしゃがみ込んだ。
「…すぐ戻るから、待ってて」
「…私も行く?」
能力鎮圧なら、私がいた方がいいだろう。
「…だめ」
でも、即答だった。有無を言わさぬ目で見つめられる。
「能力暴走の鎮圧は確かに胡桃がいた方が早いけど…今日はだめ。みんなと一緒にいて」
「でも…」
「昨日、能力使って倒れたでしょ。やっぱり使いすぎはだめ。俺が心配なの」
「…叶兎の言う通りだと思う。最近、能力使いすぎだよ」
時雨くんにもそう言われてしまっては、私は頷くしかなかった。
「…そういう事。だからいい子で待ってて。ね?」
最後にぽん、と私の頭を撫でて、叶兎くんは嵐のように屋敷を飛び出して行った。

