ふと、隣に座っていた叶兎くんが、私の手元をちょいちょいと手招きした。
「…ね、胡桃」
もっと近くに来い、ということらしい。
「え〜なに、二人だけの空間作んないでよ」
「いつものことでしょ。諦めな」
文句を言う天音くんを時雨くんがいなし、私は叶兎くんの方へ耳を寄せた。
「どうしたの?」
「………たまにはいいね、こういうのも。」
耳元で囁かれたその声は、驚くほど穏やかだった。
「叶兎くん、嬉しそうだね」
「……まあね」
素直だった。みんなの前だし、普段なら「別に」とか「普通だけど」とか言いそうなものなのに。
「うわ、叶兎がデレてる」
天音くんにそう言われると、叶兎くんが即座に鋭い視線で睨みつける。
「わ〜怖い怖い」
そんなやり取りすらも、まるで学園時代に戻ったみたいで心地よかった。
「あはは、でもほんと久しぶりだよね。みんな揃うの。」
春流くんがしみじみと呟くと、それからはそれぞれの近況報告が始まった。

