叶兎くんの前髪の隙間から覗く睫毛が微かに震えて。
「......ん…」
薄く目が開いた。
まだ焦点が合っていない赤い瞳がぼんやりと私を映す。
「......胡桃?」
寝起きの掠れた声。無防備に手が伸びてきて、私の服の袖を掴んだ。
「お誕生日おめでとう、叶兎くん。」
顔を覗き込んで、精一杯の笑顔で伝えた。
世界で一番、最初のおめでとう。
「……え」
叶兎くんは一瞬、完全にフリーズした。
ぱちぱちと瞬きを繰り返して、目の前にいる私と、自分の置かれた状況をゆっくりと理解していく。
それから──。
勢いよく起き上がったかと思うと、私を強く抱きしめた。
そのまま叶兎くんから深いため息が漏れる。
「………無理、ほんと、好き。…俺が起きた瞬間に言うとかずるすぎるんだけど」
「だって、私が1番に言いたかったんだもん」
腕の中の温もりを感じながら答えると、叶兎くんは少しだけ体を離して私の目を見つめた。
「…ふっ、ありがと」
叶兎くんはそう言って、優しく私の唇にキスを落とした。

