「……え」
「あと、本当に、胡桃は自覚が足りないし警戒心がなさすぎる! 俺以外の吸血鬼にも、人間にも…!」
照れ隠しのように声量が上がった。けれど壁ドンの体勢は崩さない叶兎くん。
「今日だって、俺が迎えに行かなきゃあのまま医務室で二人きりだったでしょ」
ぐうの音も出なかった。確かにあのまま琥珀と二人でいたらどうなっていたか。
「…その顔。何も考えてなかった顔」
う、と小さく唸る。完全に図星だった。
「…………はぁ」
と、深いため息をつかれた後。
「……だから、もう……俺以外の男に、隙見せないで。」
額がこつん、と私の肩に預けられた。
さっきまでの威圧感が嘘みたいに、ただ静かに。
私はそっと、叶兎くんの乱れた髪に手を置いた。
「…ごめんね。」
叶兎くんが、私のことで、そんなに不安になってたなんて、全然知らなかった…。
ぴくり、と肩が動いた。振り払われるかと思ったけど——そのまま、むしろ掌に押し付けるように頭を傾ける。

