短い沈黙。それから叶兎くんはふっと鼻で笑って、顔を近づけてきた。
唇が首の噛み跡のすぐ横に落ちる。
「っ……!」
そのまま跡をなぞるように舌が触れ、ぞくりと背筋が震えた。
車の中、駐車場でこんな事して...誰かに見られたら...という考えが頭をよぎるが、叶兎くんはお構い無しだ。
「ん、っ…ちょ、ちょっと──」
「……嫌?」
顔を上げずに聞いてきた。首元に吐息がかかる。
嫌かと聞かれて嫌だと言えるわけがない。………だって叶兎くんだから。
「………俺、怒ってんの。心配で駆けつけたら他の男に触られてるし」
「た、たしかに琥珀は距離感ちょっとおかしいけど…悪気はないっていうか…」
「分かってて放置してたわけ。」
声が低くなる。責めているというより、拗ねているに近い響きだった。
「…別にさ。胡桃の気持ちを疑ったことはないけど…」
言葉が途切れて、珍しく歯切れが悪い。
視線が一瞬だけ気まずげに逸らされて。
叶兎くんらしくないその様子に、私は鼓動が高鳴るのを感じた。
「胡桃、可愛いから……いろんな男が寄ってきて、ホント、気が気じゃない…」
ぼそっと、ほとんど聞き取れないくらいの音量だった。
言った本人が、最高に気まずそうに目を逸らしている。

