「あはは、嫌われちゃった。」
琥珀はそんな私達を見て、頭の後ろをかきながら笑っている。
傷ついた様子は微塵もない…どこまでもマイペースで、底が知れない男。
「じゃあ胡桃、またね。ちゃんと休んで。…さっきの話、忘れちゃダメだからね」
ひらっと手を振って、カーテンの奥に引っ込んだ。
そのまま叶兎くんに手を引かれて医務室を出る。廊下に出た途端、繋いだ手にぎゅっと力が込められた。
「……あいつ、何?」
前を向いたまま聞いてきた。声は平坦だが、歩く速度がやけに早い。
「図書館で知り合って……教授を紹介してくれたのも、彼だよ…?」
私はそう答えたけど、叶兎くんは無言のまま。
彼の背中からは、『不機嫌』という文字がはっきりと読み取れた。
裏の駐車場に停められていた叶兎くんの車に乗り込み、助手席のドアを閉めた瞬間。
シートベルトをするより先に、叶兎くんが覆いかぶさるようにして距離を詰めてきて。
両腕で退路を塞ぐように、背もたれに手をつかれた。
真上から見下ろされていて、叶兎くんの瞳の奥が複雑に揺れている。

