総長は、甘くて危険な吸血鬼 Ⅱ




「あはは、嫌われちゃった。」



琥珀はそんな私達を見て、頭の後ろをかきながら笑っている。

傷ついた様子は微塵もない…どこまでもマイペースで、底が知れない男。



「じゃあ胡桃、またね。ちゃんと休んで。…さっきの話、忘れちゃダメだからね」



ひらっと手を振って、カーテンの奥に引っ込んだ。

そのまま叶兎くんに手を引かれて医務室を出る。廊下に出た途端、繋いだ手にぎゅっと力が込められた。



「……あいつ、何?」



前を向いたまま聞いてきた。声は平坦だが、歩く速度がやけに早い。



「図書館で知り合って……教授を紹介してくれたのも、彼だよ…?」



私はそう答えたけど、叶兎くんは無言のまま。

彼の背中からは、『不機嫌』という文字がはっきりと読み取れた。


裏の駐車場に停められていた叶兎くんの車に乗り込み、助手席のドアを閉めた瞬間。


シートベルトをするより先に、叶兎くんが覆いかぶさるようにして距離を詰めてきて。

両腕で退路を塞ぐように、背もたれに手をつかれた。


真上から見下ろされていて、叶兎くんの瞳の奥が複雑に揺れている。