「……何してんの。」
静かに、刃物の切っ先のような鋭さで琥珀を見据えて。
「あ、彼氏さん。早かったね。」
琥珀は私から手を離すと、ひらひらと振って叶兎くんに挨拶した。
その肝の据わりっぷりに、一周回って感心してしまう。
「お前、誰」
叶兎くんが琥珀と私の間に割り込むように立ち、私を背後に隠した。
……琥珀を見下ろす目は完全に、敵を排除しようとする王の目。
「楪琥珀。月宮大学医学部の一年。さっき、一緒に暴走事件に巻き込まれたんだよね。」
琥珀はすらすらと完璧な自己紹介をした後、にこっと笑って叶兎くんを見上げた。
「……へぇ。で、なんで俺の女の手触ってたの。」
「触ってたんじゃなくて、脈診?医学生だし。」
嘘か本当か分からない絶妙なラインの言い訳。琥珀は肩をすくめてみせる。
一方叶兎くんの赤い瞳は、琥珀の魂まで射抜くように凝視する。
「……脈診ね。」
完全に信じていない目だった。一歩、琥珀との距離を詰める。
「…胡桃、帰るよ。」
「う、うん…!」
その後、叶兎くんは私に向かって手を差し出してくる。

