とある男子高校生の日常

夕方の空は、色を失いかけていた


旧校舎の影が長く伸び


校内に人の気配はほとんどない


彼女は俺の前に立ったまま、何も言わない


待っているのか、待っていないのかも分からない


——逃げ道は、もうない


「俺は」


喉が、わずかに詰まる


「感情を、切り捨てて生きてきた」


彼女は黙って聞いている


「合理的でいれば、誰も傷つけないと思ってた」


違う


傷つかないようにしていただけだ


「お前に会ってから」


言葉を選ぶ余裕がなくなる


「それが、できなくなった」


風が吹き、制服の裾が揺れた


「離れられた時、初めて分かった」


胸の奥が、強く脈打つ


「失うのが、怖かった」


これ以上、正直になる必要はない


でも、止まらなかった


「好きだ」


短い言葉


逃げ場のない言葉


彼女の目が、僅かに見開かれる。


「一緒にいろとは言わない」


本心だ