月のうさぎと地上の雨男

「ねえ凪、今度、君の家にお邪魔していいかな」


 ある日の放課後、凪を迎えに高校へ行った(わたる)は、車で並んで座りながら切り出した。

 凪は一瞬キョトンとしてから、ゆっくりシートベルトを締めた。


「いいよ。……えっと、パパはいないけど、ママには、その、挨拶してもらうことになるけど」

「するよ、もちろん」


 渡が即答すると、凪はパッと笑顔になった。


「ありがとう」

「一緒に映画を観たいんだけど、いいかな」

「いいよ。何にしようか」

「この前観た映画と同じ作者が原作の映画が、配信されてるらしいからどうかな」

「見たい!」

「良かった。俺の方でオヤツも用意するから、楽しみにしてて」


 渡が言うと、凪はニコニコしながら頷く。

 バックミラーでは猿渡(さるわたり)が穏やかに微笑んでいた。