車に戻ると、猿渡が渡のマンションへとハンドルを切った。
「渡くんのご家族に挨拶に行くわね」
「お嬢様が突然訪問されますと、雨水様のご家族も対応にお困りでしょうから、わたくしがお伺いいたします」
「でも」
「お嬢様」
「……わかりました」
凪は不満そうに唇を尖らせ、握ったままの渡の手をつなぎ直した。
やがて車はマンションのロータリーに入った。
「雨水様、ご一緒させていただきます」
「わかりました。えっと、凪。今日はありがとう。デートに誘ってくれて嬉しかった」
「うん! また行こうね」
ニコニコと渡を見上げる凪の頭を撫でて、車を降りる。
移動中に家へ連絡すべきだったと渡が気づいたのは、エレベーターに乗ってからだった。
「ただいま……あのさ、親父いる?」
渡が帰宅すると、蛙前と雫が出迎えた。
雫は兄からデートのことを聞き出そうと待ち構えていたらしい。
「旦那様はお戻りではございません。まだ数刻かかるということです」
「じゃあ母さんは?」
「いるわよ。さあさあ、吐きなさいよ」
雫と同じく待ち構えていたらしい歌帆が出てきた。
渡は歌帆と雫を宥めて振り返った。
「ちょ、待って。お客様いらっしゃるから」
「夜分に申し訳ございません」
「……ようこそおいで下さいました。蛙前、旦那様に連絡を」
「承知いたしました奥様」
歌帆がスッと外向きの顔になり、蛙前が頭を下げて下がった。
猿渡は人の良さそうな笑みを浮かべた。
「本日はお詫びに参りましたのでお気遣いは不要でございます。夜遅くまでご子息をお借りしてしまい申し訳ございません。こちら、心ばかりの品ではございますがお納めください」
差し出された熨斗で包まれた化粧箱に雫が「ヒュッ」と息を吸った。
それくらい、有名な高級菓子折だ。
「わざわざこのような品をご用意いただきまして、ありがとうございます」
「とんでもございません。我が主のワガママにご子息を付きあわせてしまい、申し訳なく思いますが、今後とも、よろしくお願いいたします」
その後、猿渡は歌帆と二言三言交わして帰って行った。
渡はともかく風呂に向かう。
風呂から上がると譲が帰宅していて、ダイニングで歌帆と話していた。
雫はリビングでスマホをいじりながら、先ほどの手土産を食べていた。
少し迷ってから、渡はダイニングテーブルに着いた。
「渡くんのご家族に挨拶に行くわね」
「お嬢様が突然訪問されますと、雨水様のご家族も対応にお困りでしょうから、わたくしがお伺いいたします」
「でも」
「お嬢様」
「……わかりました」
凪は不満そうに唇を尖らせ、握ったままの渡の手をつなぎ直した。
やがて車はマンションのロータリーに入った。
「雨水様、ご一緒させていただきます」
「わかりました。えっと、凪。今日はありがとう。デートに誘ってくれて嬉しかった」
「うん! また行こうね」
ニコニコと渡を見上げる凪の頭を撫でて、車を降りる。
移動中に家へ連絡すべきだったと渡が気づいたのは、エレベーターに乗ってからだった。
「ただいま……あのさ、親父いる?」
渡が帰宅すると、蛙前と雫が出迎えた。
雫は兄からデートのことを聞き出そうと待ち構えていたらしい。
「旦那様はお戻りではございません。まだ数刻かかるということです」
「じゃあ母さんは?」
「いるわよ。さあさあ、吐きなさいよ」
雫と同じく待ち構えていたらしい歌帆が出てきた。
渡は歌帆と雫を宥めて振り返った。
「ちょ、待って。お客様いらっしゃるから」
「夜分に申し訳ございません」
「……ようこそおいで下さいました。蛙前、旦那様に連絡を」
「承知いたしました奥様」
歌帆がスッと外向きの顔になり、蛙前が頭を下げて下がった。
猿渡は人の良さそうな笑みを浮かべた。
「本日はお詫びに参りましたのでお気遣いは不要でございます。夜遅くまでご子息をお借りしてしまい申し訳ございません。こちら、心ばかりの品ではございますがお納めください」
差し出された熨斗で包まれた化粧箱に雫が「ヒュッ」と息を吸った。
それくらい、有名な高級菓子折だ。
「わざわざこのような品をご用意いただきまして、ありがとうございます」
「とんでもございません。我が主のワガママにご子息を付きあわせてしまい、申し訳なく思いますが、今後とも、よろしくお願いいたします」
その後、猿渡は歌帆と二言三言交わして帰って行った。
渡はともかく風呂に向かう。
風呂から上がると譲が帰宅していて、ダイニングで歌帆と話していた。
雫はリビングでスマホをいじりながら、先ほどの手土産を食べていた。
少し迷ってから、渡はダイニングテーブルに着いた。



