渡は困惑したまま、「合意」という言葉の意味を考えた。
自分は今、何に合意させられたのだろう。
気づけば手のひらが汗でべたつき、スマホが滑り落ちそうになっていた。
『さしもの私も、相手の合意無しに連れて帰ったら駄目なことくらいわかっています』
「う、うん?」
『でも、合意なら大丈夫ね。万事問題ありません。先程お伝えしたとおり、月人は強欲で、欲しいものは諦めないの』
凪の欲しいものは自分なのだろうか。
渡が口を挟む間もなく、話は進んでいった。
『あと、猿渡……さっき渡くんに席札を渡したボディガードなんだけど。彼から聞いたと思いますけど、私が渡くんとこうして連絡を取ることを母には伝えて、承知してもらっているから』
「……それは、うん。聞いた」
『ご両親に話はした?』
「うん。両親は知ってる」
さっきから自分は相槌しか打っていないと渡も気づいていたが、だからといって口を挟むことはできなかった。
立場的にも、勢い的にも、渡は完全に流されていた。
『ご両親は、私と連絡を取ることを反対された?』
「いや、反対はされてない」
『じゃあ、大丈夫。ねえ渡くん』
「はい」
『首を洗って待っててね』
「えっ」
『お疲れのところ、長々とごめんなさい。私の言いたいことばかりをあれこれ言ってしまったわね。でも、全部本心だし、本気なの。おやすみ、渡くん』
「……うん。おやすみ、凪」
『いつか直接聞かせてね』
「ちょっ!?」
意味を聞く間もなく、通話は切られた。
渡はしばらくスマホを見つめて、やがてベッドに倒れ込む。
ずっと正座で話していたせいで、渡の足は痺れていた。
渡はまだ晩ごはんも食べていないうえ、今の通話内容を両親に報告しなければならない。
「……なんもかんも、明日でいいか」
慣れない披露宴でただでさえ疲れていたところに、怒涛の展開が重なり、渡はすっかり疲れ果てていた。
渡はなんとかベッドによじ登り、ニャインの家族用グループをタップする。
『会いたいから、首洗って待ってろって言われた。疲れたから寝る。おやすみ』
と送って、スマホを充電器につないだ。
部屋の外で誰かが椅子から転げ落ちる音に続いて、騒がしい足音や扉をノックする音がしたが、渡はすべて無視して頭まで布団をかぶった。
彼女は今どうしているだろうか。
凪も同じようにまどろみながら、自分のことを考えていてくれたらと思った。
自分は今、何に合意させられたのだろう。
気づけば手のひらが汗でべたつき、スマホが滑り落ちそうになっていた。
『さしもの私も、相手の合意無しに連れて帰ったら駄目なことくらいわかっています』
「う、うん?」
『でも、合意なら大丈夫ね。万事問題ありません。先程お伝えしたとおり、月人は強欲で、欲しいものは諦めないの』
凪の欲しいものは自分なのだろうか。
渡が口を挟む間もなく、話は進んでいった。
『あと、猿渡……さっき渡くんに席札を渡したボディガードなんだけど。彼から聞いたと思いますけど、私が渡くんとこうして連絡を取ることを母には伝えて、承知してもらっているから』
「……それは、うん。聞いた」
『ご両親に話はした?』
「うん。両親は知ってる」
さっきから自分は相槌しか打っていないと渡も気づいていたが、だからといって口を挟むことはできなかった。
立場的にも、勢い的にも、渡は完全に流されていた。
『ご両親は、私と連絡を取ることを反対された?』
「いや、反対はされてない」
『じゃあ、大丈夫。ねえ渡くん』
「はい」
『首を洗って待っててね』
「えっ」
『お疲れのところ、長々とごめんなさい。私の言いたいことばかりをあれこれ言ってしまったわね。でも、全部本心だし、本気なの。おやすみ、渡くん』
「……うん。おやすみ、凪」
『いつか直接聞かせてね』
「ちょっ!?」
意味を聞く間もなく、通話は切られた。
渡はしばらくスマホを見つめて、やがてベッドに倒れ込む。
ずっと正座で話していたせいで、渡の足は痺れていた。
渡はまだ晩ごはんも食べていないうえ、今の通話内容を両親に報告しなければならない。
「……なんもかんも、明日でいいか」
慣れない披露宴でただでさえ疲れていたところに、怒涛の展開が重なり、渡はすっかり疲れ果てていた。
渡はなんとかベッドによじ登り、ニャインの家族用グループをタップする。
『会いたいから、首洗って待ってろって言われた。疲れたから寝る。おやすみ』
と送って、スマホを充電器につないだ。
部屋の外で誰かが椅子から転げ落ちる音に続いて、騒がしい足音や扉をノックする音がしたが、渡はすべて無視して頭まで布団をかぶった。
彼女は今どうしているだろうか。
凪も同じようにまどろみながら、自分のことを考えていてくれたらと思った。



