天照と晴原が表なら、雨水と風間は裏にあたる。
今はそうではないが、かつては後ろ暗い役目を担っていた時代もあった。
天照、月詠、晴原が率先して雨水と風間と公的に関わることで、そうしたイメージを払拭しようとしているが、年輩者の中には依然として雨水と風間を警戒する者もいる。
そして、その警戒はあながち的外れでもない。
ボディガードは微笑んで、手のひらを渡へと向けた。
「大丈夫です。我が君はあなたにずいぶん入れ込んでいらっしゃる。……先日のことが余程嬉しかったのでしょう」
「あの日、あなた方も側にいたんですよね?」
「もちろんでございます。ただ、公共の場であった上に、周囲に第三者が多く、風除室という狭い空間でのことでしたため、助けが遅れました。雨水様が我が君を助けてくださったこと、深く感謝しております。本来であれば公式に謝辞を送らせていただくのですが……その、我が君が父君に内密にと仰せでして……」
ボディガードは困った顔で言葉を濁す。
確かに、名家のお嬢様でなくても、「同級生とデートしたらデートDVにあって、それを助けてくれた大学生とその後も会っていました」などと父親には言いにくいだろう……と渡は頷いた。
「ですが、雨水様から我が君が手を挙げられそうになった件について確認がありまして、該当の同級生につきましてはすでに処分済みでございます。ご安心ください。重ねて感謝申し上げます」
「はあ……まあ、それは僕も父に問いただされて言わざるを得なかっただけですので。でも、はい。彼女が安心して学校に通えているのなら、よかったです」
「そちらの信書は、お納めください。父君には内密にと仰せですが、母君はご存じですので、何かあれば我が君と母君が口添えくださるかと」
「いきなり僕の首が物理的に飛ぶことは、ないんですね?」
「そんなマリー・アントワネットのようなことはありません。ご安心ください」
「我が家が取り潰されるようなことも、ありませんよね?」
「流石に我が君の父君の力を持ってしても、そちらのお家を完全に取り潰すのは難しいので、大丈夫です」
渡は(難しいだけで、できなくはないのか……)と思いながらも、黙って頷いた。
「わかりました。えっと、僕が受け取ったことと……これを、彼女に渡していただけますか?」
ポケットから渡の席札を取り出した。
ボディガードがスッとボールペンを差し出したので、ありがたく受け取る。
渡のニャインIDと、後ほど連絡する旨を添えて記し、ボディガードに差し出した。
「承知いたしました。我が君のこと、何卒よろしくお願いいたします」
ボディガードは最後に少しだけ笑みを浮かべて頭を下げた。
正直、月詠の姫君直属のボディガードなら、雨水の分家の次男である渡より立場が上に見えたため、渡も立ち上がって頭を下げた。
渡がボディガードの背中を見送って、凪の席札をポケットにしまうと、後ろから肩を叩かれた。
今はそうではないが、かつては後ろ暗い役目を担っていた時代もあった。
天照、月詠、晴原が率先して雨水と風間と公的に関わることで、そうしたイメージを払拭しようとしているが、年輩者の中には依然として雨水と風間を警戒する者もいる。
そして、その警戒はあながち的外れでもない。
ボディガードは微笑んで、手のひらを渡へと向けた。
「大丈夫です。我が君はあなたにずいぶん入れ込んでいらっしゃる。……先日のことが余程嬉しかったのでしょう」
「あの日、あなた方も側にいたんですよね?」
「もちろんでございます。ただ、公共の場であった上に、周囲に第三者が多く、風除室という狭い空間でのことでしたため、助けが遅れました。雨水様が我が君を助けてくださったこと、深く感謝しております。本来であれば公式に謝辞を送らせていただくのですが……その、我が君が父君に内密にと仰せでして……」
ボディガードは困った顔で言葉を濁す。
確かに、名家のお嬢様でなくても、「同級生とデートしたらデートDVにあって、それを助けてくれた大学生とその後も会っていました」などと父親には言いにくいだろう……と渡は頷いた。
「ですが、雨水様から我が君が手を挙げられそうになった件について確認がありまして、該当の同級生につきましてはすでに処分済みでございます。ご安心ください。重ねて感謝申し上げます」
「はあ……まあ、それは僕も父に問いただされて言わざるを得なかっただけですので。でも、はい。彼女が安心して学校に通えているのなら、よかったです」
「そちらの信書は、お納めください。父君には内密にと仰せですが、母君はご存じですので、何かあれば我が君と母君が口添えくださるかと」
「いきなり僕の首が物理的に飛ぶことは、ないんですね?」
「そんなマリー・アントワネットのようなことはありません。ご安心ください」
「我が家が取り潰されるようなことも、ありませんよね?」
「流石に我が君の父君の力を持ってしても、そちらのお家を完全に取り潰すのは難しいので、大丈夫です」
渡は(難しいだけで、できなくはないのか……)と思いながらも、黙って頷いた。
「わかりました。えっと、僕が受け取ったことと……これを、彼女に渡していただけますか?」
ポケットから渡の席札を取り出した。
ボディガードがスッとボールペンを差し出したので、ありがたく受け取る。
渡のニャインIDと、後ほど連絡する旨を添えて記し、ボディガードに差し出した。
「承知いたしました。我が君のこと、何卒よろしくお願いいたします」
ボディガードは最後に少しだけ笑みを浮かべて頭を下げた。
正直、月詠の姫君直属のボディガードなら、雨水の分家の次男である渡より立場が上に見えたため、渡も立ち上がって頭を下げた。
渡がボディガードの背中を見送って、凪の席札をポケットにしまうと、後ろから肩を叩かれた。



