ながされて、絆されて、ふりむいて




「花鈴」


「……っ、なんで」



わたしは確かに自分の家の住所を伝えた。この景色はわたしのマンションと共にあるもの。


いつもの景色に迷い込んだイレギュラー、かんたんに恋心がこぼれ落ちてしまいそうだ。



「凪、どうして、」



涼名ちゃんに付き添ってもらう手前、自分の家を目的地にして。そのあとこっそり、凪のところへ向かうつもりだった。それがどうして、凪がここにいるの。



「最初は自分の家に戻るって自信があった。その後、俺んとこに来てくれる自信もあった」



確信が落ちる。閑静な住宅街で、わたしと凪の声だけが小さく響いている。


だけどこれは、わたしたちだけのものだ。藍に染まった空の下、主張を忘れない星、街灯のあかりがわたしたちを照らす。



「……だから、」



まっすぐわたしを見つめる君と、ぎゅうっと視線が絡む。真剣で、ひたすら実直さを映す表情はわたしだけのもの。まばたきすら惜しいほど。


この視線を捕まえて、捕まるたび、わたしは何度だってきみを好きになるんだと思う。



「だから迎えに来た、もう待てない」



……帰る前に、迎えにきてくれる。

凪だ。わたしの知る凪。茅野凪はずっとそうだ。