◻︎
この夜が、わたしたちを引き合わせるだけのものだと都合の良い解釈をしてしまいそうだ。
シゴデキ後輩は会社の下にタクシーを呼んでくれていた。まだ少しだけ足もとに自信がなかったけれど、涼名ちゃんがいてくれるおかげで7センチのヒールも怖くない。
「本当にここまで大丈夫ですか?」
「うん、十分だよ。何から何までありがとうね」
「いえいえ。私は何も……。あ、でもお礼として茅野さんとのこと洗いざらい話してもらいますからね!」
「あはは、怖いな〜」
何気ない会話もできるくらいに頭もクリア。マンションの目の前まで送り届けてもらって、涼名ちゃんに小さく手を振って。
ひとりタクシーから降りて、住宅街の静けさに足を踏み入れた、その瞬間だった。
──視界に映って、わたしを呼ぶ声を受け取った。世界でいちばん大好きなひとの声とシルエットが飛び込んできた。



