ながされて、絆されて、ふりむいて




「あぁ、えっとえっと……産業医の先生が言うには、たぶん疲れとか寝不足じゃないかって。私が昨日まで連続休暇頂いてたので、そのぶんお嬢先輩にお任せしちゃってて。なのであの、寝て休んだら良くなるって」


「そっか、ありがとう。本当に良かった……」



大きな安堵の息が漏れた。良かった。自然と入っていた肩の力が抜けた感覚があった。


さっきまで慌てたように俺と花鈴へ交互に視線を彷徨かせていた彼女の口調が少しずつテキパキしたものに変わる。これはきっと、三戸さんや花鈴の教育なのだろう。



「このまま休んでもらって、一泊するのもいいし、目が覚めたらそのまま帰るでもいいそうで」



涼名さんの言葉を思考回路に組み入れながら、ゆっくりと花鈴の眠るベッドへと近づく。


いつもと変わらない可愛い寝顔にひどく安心した。そっと頬にふれると、すこしだけ高い温度が伝わった。



「……かわい」



自分にしか聞こえないくらいの声量で思わずこぼれ落ちてしまった。慌てて、涼名さんに返す言葉の準備をする。


……本当はもっと触れたい。今すぐにでも抱きしめたい。そんな衝動を理性で抑え込んで、今後の選択肢を紡ぐ。


幼なじみで、家族と同じくらい大切な存在であると同時に、会社の同僚であることを忘れてはならない。