ながされて、絆されて、ふりむいて



──向かう途中、あの夏を思い出した。過去の登場人物のなかで、現在も物語の主人公でいるのは花鈴だ。


持ち歩いている常備薬と、1階のコンビニで花鈴の好きなものを買ってから15階にある救護室へ足を進めた。



「お疲れ。茅野も一服か〜?」


「はは、急用でちょっと」



道中で同じ階にある喫煙室から出てきた斎藤さんに声をかけられた。タバコミュニケーションとは言うけれど、酒と同じく煙草はあまり好きになれなかった。……煙草の匂いを花鈴が嫌がるから。



「ふーん。そうだ、この間の名波さんの代打断ってきたの、根に持ってるから」


「俺に名波さんの代わりは無理ですって、本人にも言いましたよ」


「とか言って、どうせ女と会ってたんだろ。いーよなー、イケメンは」


「妄想で僻まないでください」



この間までのプロジェクトで一緒になった二つ上の先輩である斎藤さん。


彼からの飲みの誘いを断ったのは、なんとなく、その日に花鈴と名波さんが会うような気がしたから。


気になりすぎて、落ち着いていられなくて近所を彷徨いていたらばったり遭遇してしまって、予感は当たるものだと実感した。