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いつもの100倍くらいエレベーターが遅く感じた。4から9のうつりゆく数字にさえもどかしさを覚えた。執務室に入る前の、社員証をかざすその動作すら鬱陶しい。
「三戸さん」
花鈴の席まで一直線。普段よりもざわめきが漂う人事部のフロアで、花鈴の席、正確には三戸さんのところへ走った。
思っていたより大きな声になってしまった。突然現れた俺に周りの視線が集中する。送られる複数の眼差しの種類を考える余裕はなかった。
けれどこのフロアにいる全員に対して、花鈴との関係も花鈴への恋心も、なにもかも、隠すつもりはない。それより大事なことがあるし、むしろ既成事実になってしまえばいいとすら思う。
「茅野」
三戸さんと顔を合わせるのは研修以来。仕事が早くて丁寧だと花鈴からよく聞かされている。花鈴は三戸さんに憧れて人事部を希望したほどだ。
記憶の中と変わらず、整えられた外見は知的な印象を与える。瞬きを一回、詳しい説明は後、と言わんばかりに口を開いた。



