ながされて、絆されて、ふりむいて




「名波さん、急用ができたんでまた今度でいいですか」



国内営業部のフロアで、おそらく俺の心拍数だけが急上昇している。



俺を訪ねてやってきた名波さんに伺いを立てる。というか、ノーと言われても名波さんを振り払って花鈴の元へ向かうと思う。


そうしていれば、やっぱりどこか掴めない、自由で余裕でゆるやかな視線を送られた。



「構わないよ、急ぎでもないから。にしてもお前、児玉さんに心底ベタ惚れしてんのな」



児玉花鈴という特別な女の子が近くにいて、好きにならずにいられるわけがない。もう無理だ、駄目だ、我慢できない。駆け引きなんていらない。


もう逃げない。その覚悟を言葉にして、名波さんには証人となってもらおうか。



「当たり前です。花鈴より大事なことなんて、この世にないので」



隠すも隠さないも、もうどうだっていい。動く足は今後を省みない。


拗れて絡まりまくった糸を、少しずつ、解こうか。




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