ながされて、絆されて、ふりむいて



「この資料を試験的に展開する方向で、それを茅野の取引先を中心に……なんか鳴ってね?」



続く名波さんの言葉を遮るように、先ほどまで睨み続けていたスマホが机の上で震えた。



「電話?いいよ」


「あー、社用じゃなくてプライベートなんで、後にします」


「にしてはずっと鳴ってるけど。別に俺は気にしないから」


「…………すみません、ありがとうございます」



SNSが発展する世の中で、電話番号を使って通話することはかなり減っていた。花鈴との電話だってメッセージアプリの通話機能を使う。


番号でかかってくるのは大抵詐欺電話か、保険会社の営業か。けれどここまで諦めが悪いのはなかなか出会わない。


090から始まる個人の携帯番号には全く身に覚えがないけれど「応答」へスライドして通話を開始した。