ながされて、絆されて、ふりむいて



ふらっと俺のデスクに現れた名波さんは、それはそれは無責任に言葉を放つ。俺と花鈴の関係を知っているのは名波さんだけ。執務フロアで安易に名前を出さないでほしい。


つーか、いつから知ってたんだこの男は。なんとなく、かなり前からな気がしている。



「……俺はまだしもあいつをからかわないでください」



別に名波さんのことは嫌いではない。けど溢れる余裕さが腹立たしい。俺は花鈴のことでいつも余裕がないのに。


からかいたいなら俺だけにしてほしい。花鈴にはもう傷ついてほしくない……って、たぶんいちばん傷つけているのは俺だけど。そういう自分も嫌いだ。



「で、用件はそんなんじゃないっすよね」


「おーそうそう。茅野の担当先で質問があってさ」



さすがの名波さんも、わざわざ執務室まで来てからかうだけなんてないだろう。用件を問えば、きちんと真面目な答えが返ってきた。


そして一瞬で仕事モードの顔つきに変わる。そういう切り替えができるところは素直に尊敬している。仕事もできる人だ。会社の先輩としては、本当に嫌いではないのだ。