ながされて、絆されて、ふりむいて




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さっきまで違和感なくパソコンに向かっていたお嬢が何の前触れもなく倒れた。……いや、正確には仕事への没入が過去一だったという違和はたしかに存在していた。



「涼名、救護室に内線で状況共有しといて」


「は、はい……!」



普段は静かなフロアも、すこしだけ声が重なっている。


倒れてしまった後輩への責任を感じながらも、彼女の疲労はおそらく仕事量ではない。むしろ、仕事をしていないと壊れてしまいそうな脆さがここ数日の児玉花鈴にあったからだ。



「(お嬢、ごめん……!)」



こころの中で謝罪しながら、デスク横のキャビネットに仕舞われたサブバッグを手に取った。飲んでいる薬や保険証を確認するために。



「……え、これ、」



彼女のカードケースにお行儀よく並んでいた、ピンク色の保険証。そこに、ひらりとくっついていた付箋に視線が吸い込まれた。見覚えのある丁寧な字に従う。



『……はい、──です』


「やっぱり君だったのね」



スマホの先に繋がれた相手に状況を伝えれば、すぐに向かう、と気が気じゃない様子だった。いつも冷静な〝彼〟が明らかに平静さを欠いていた。