「お嬢、涼名の分までありがとうね」
「いえいえ、さっき仰っていた通り、わたしの長期休暇も涼名ちゃんにお任せするつもりですし」
「涼名の脳みそをお嬢仕様に鍛えるから期待しといて」
「あはは、頼もしいです」
涼名ちゃんの指導担当でもある三戸さんの言葉に相槌を打ちつつ、時計を確認すれば短い針は4をさしていた。
凪との約束の日である今日、残業しないように週の前半に仕事を詰めてこなした。立てたスケジュール通りに業務を遂行できるのは、この二年で一番成長したところだと思う。
定時まであと1時間。残りの時間は来週の準備に充てようと、立ち上がったその瞬間だった。
「(……あれ?)」
ずっと座りっぱなしだったからだろうか。無事に仕事を終えた開放感からだろうか。それとも、このあと凪に会うという緊張からだろうか。
「(これ、だめなやつ)」
それはたった一瞬のこと。前兆なんてなく、突然に。
──ゆるやかに、視界がぐわんと揺れた。



