「今ね、他のひとが児玉教授と話してて、もうすぐ終わると思うんだけど……あ、戻ってきた」
明らかに大学の学生ではないわたしと凪に、柔らかく微笑む。研究室から出てきた男の人を捉えた瞬間に、よりいっそう和やかな笑みにパワーアップした。一目でわかる、この人は彼女の恋人なのだと。
「栞、お待たせ。……あれ、このふたりは?」
「児玉教授に用事があるみたい」
中性的で清潔感があって、彼女に負けないくらい優しそうで。穏やかに目を細めて、とても綺麗に笑うひと、というのが第一印象だった。
「はい。わたしの父で、母に頼まれておつかいです」
ようやく声となって、対峙した二人に事実を述べる。何もおかしなことは言っていないはずなのに、みるみる目が見開かれていく。
「あなた、児玉教授の娘さん……!?」
「はい、そうですが……」
驚いたように、それでいてどこか心配したかのような表情をわたしに向ける。……お父さんが厳しすぎて、わたしまで有名人なのだろうか。



