ながされて、絆されて、ふりむいて



大学名がアルファベットで印字された石碑の横を通って、レンガ調のアルファベットを蹴ってゆく。


森のなかに佇むような、木々に囲まれたキャンパス。夏はセミのコンサートが開催されていて、秋は暖かな色でおめかししている。お父さんがいるから、もう慣れた道だ。凪がとなりを歩いていることだけ今までと違う。


お父さんの研究室は、キャンパス内でも奥のほう。初見では迷ってしまいそう、って話をしながら4階の目的地へと一直線に辿っていけば、ふわりと花が綻ぶような柔らかな声が届けられた。



「児玉教授に用事?」



研究室前で本を何冊か抱えた彼女は女のわたしから見ても綺麗で整った顔立ちをしていた。思わず見惚れて、肯定を返すことすらできなくて。


そんなわたしのイエスを汲み取ってくれたのか、言葉を紡ぎ続ける。