「……ごめん、俺」
「……ちがう、ごめんなさい、変なこと言って」
もう、引き返せない。
「凪、お願いを聞いてほしい」
ぜんぶ、上書きして。
「凪、わたしね、」
「……うん」
「凪がいいの」
「……うん」
「最初は、凪が、」
凪の目は覚悟を決めたみたいに迷いはなくて、言い終わるより先にくちびるが塞がれた。
今日も鬱陶しそうに目元にかかる前髪が、わたしのほうにもふわりと掠った。
幾度となく遊びにきたこの場所で、恋人でもないのにキスをした。わたしはそれ以上を強請った。
「うん、花鈴が望むなら、俺はいくらでも」
──高校生にはまだ早い、なんて思い込み。
凪もそう、周りの子たちだってそう。早すぎるわけじゃない。恋人と手を繋いでキスをして、それ以上のことをするの、おかしくなくて、そんなことはわかっていて。
ただ、言い聞かせていた。まだ早いって。
だから、本音はちがう。ただわたしは、凪以外とそういうこと、したくなかっただけ。凪じゃないと嫌だった、それだけなの。
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