ながされて、絆されて、ふりむいて



「凪、出てきて」



先生のおうちから向かったのは自分の家ではなく凪のところだった。玄関の前で電話をかけて呼び出した。相変わらずわたしの電話に出るのは早くて、すぐにドアが開いた。



「花鈴?……って何その顔」


「なぎ、なぎ……っ!!」



もう今は別れたらしい綺麗な女のひとと一緒にいたときと同じ、深い青のトレーナーを着た凪を見たら安心して力が抜ける。


支えるように抱きとめた彼の背中に手を回して、矢野先生に抱きしめられた事実をなくすように顔を埋めた。



「花鈴、大丈夫、落ち着いて。俺ずっといるから」



導かれるままに凪の部屋に踏み入れた。先生の部屋とは違う、小さい頃からよく遊びに来た慣れた場所。


黒とブラウンで統一されていて、オレンジが淡く灯った先生の部屋とは対照的で、黒と白ではっきりと色味が分かれた部屋。


たまに青色が忍び込む凪らしさに涙腺は飽きもせず涙を呼び寄せる。