「ごめんね?怖かったね?嫌がる女の子に手は出さないよ」
いつもの声のトーンに戻った気がした。優しくて甘くてふわふわと惑う柔らかな声色。
わたしたちは、これで終わりなんだと思う。恋人という関係性に似合う感情は、お互い待ち合わせていなかった。
彼は性的な意味での下心、わたしは凪に振り向いてほしいという下心を持って。恋心はなかった。利用する対象だっただけだ。
後から知った、矢野先生には恋人も、恋人っぽい関係の人も数えきれないくらいいたと。
──ただ、振り向いてほしかった。それだけなの。わたしを見てほしかった、だから。



