その夜、西園寺弥生は、 椿の前ではいつもより口数が少なかった。 グラスを傾けながら、 彼女の一挙一動を視界の端で追う。 視線の落とし方、 メニューを閉じる指先の迷いのなさ、 値段を告げられた時の呼吸の変化 ――いや、変化の“なさ”。 (……普通じゃない。) 高い酒を頼む客は、珍しくない。