店が閉まったあと、 弥生はいつものように バックヤードでネクタイを緩めていた。 黒瀬の姿が見えないことに、 最初は何も思わなかった。 オーナーが席を外すことなど、珍しくもない。 だが、違和感は黒服の一言で形になる。 「オーナー、今日はもう戻らないそうです。」 「……珍しいな。」 弥生はそれだけ言って、ロッカーを閉めた。 それ以上を聞かなかったのは、 聞く必要がないと分かっていたからだ。