西園寺弥生が呼ばれたのは、 店の奥の席だった。 「……呼ばれた。」 そう言いながらも、腕はすぐに離れない。 名残惜しそうに、 ほんの数秒だけ椿の腰に残る。 「すぐ戻る。」 誰に向けた言葉か分からないほど低い声。 「どうぞ。」 椿は静かに微笑む。 弥生は一度だけ椿の顔を見て、 それからゆっくりと席を立った。 歩き出してからも、一度だけ振り返る。