「ないとくーん!いつか一緒に映画見に行こー!」

下校の時間になる頃には、こまりと男は相当仲良くなっていたようだった。

男の制服に付いている名札を見たところ、男の名は[大川ないと]というようだ。

こまりの誘いに、ないとは笑顔で「おう!」と返事をする。

このままだと、二人は映画を観に行くことになるのだろう。

私をおいて、二人で…。そしていつか、こまりは私のことを忘れて男に夢中になって…。

無意識に机を殴り付けていた。不安と怒りが溢れて、もう限界だった。

私は、ないとの胸ぐらを掴んで叫ぶ。「あんたたち!人前でイチャイチャイチャイチャと目障りなんだよ!!!近くに人がまだいるっていうのに!それに、こまりは私の友達のなのよ!?私と話す機会を奪われちゃ困るのよ!」

叫んだ、精一杯叫んだ。言ってやった、遂に!! 

ないとは状況が飲み込めず、私を不思議そうに見つめている。

その近くで、こまりのすすり泣く声が聞こえた。これはまずいと思った私は、こまりを抱き締める。

「ああ、こまり。あなたをいじめたい訳じゃないの。だから安心して…」

泣いているこまりを懸命に慰めようとした私に返ってきたのは…こまりからの平手打ちだった。

「うるさい!あんたなんか大嫌いよ、すずね!」こまりが叫ぶ。こちらを泣き腫らした赤い目で睨み付ける。

私には、その理由が分からなかった。