入学式が終わり、私はこまりの元へ駆け寄っていく。

私が「こまり!」と呼び掛ければ、こまりはいつもならこちらに満面の笑みで駆け寄って来る…はずだった。

「ねえ、こまりー…あれ?こまり?」私はこまりの目の前に立っているのだ。まさか聞こえていないなんて事があるはずがない。

どこか胸騒ぎがした私は、こまりの目線の先を追う。

…そこには、私たちと同じ新入生であろう一人の男子が座っていた。

他の生徒たちが保護者と一緒に自分達のクラスの教室に向かう中、彼はずっと一人で俯いていて動こうとする気配が全くなかった。

「ねえ、すずね!」突然あげられたこまりの声に私は驚く。

「ねえすずね!あの人かっこ良くない!?わー、あの人好きかも♥️」

理解が追い付かなかった。今、あの男がなんだって?

(え?まさか、いきなりの『恋』ってやつ?)

友達の初恋は、友達として応援するべきだと思う。でも…でも…

どうして私の胸はこんなにソワソワして落ち着かないんだ?

私は、こまりの後ろで呆然と立ち尽くすことしかできなかった。