桜がヒラヒラと、サラサラと髪を撫でる風と共に舞い、美しくも儚く優雅に散っていった。

目前に迫るずっと夢見ていた校門までの道のりを歩いていると、時々肩に桜が乗ってくる。

私がこれから三年間通うことになる[広浜中学校]の白く大きな校門までの道のりは、桜で辺り一面ピンク色に…桜色に華やかに染まっていた。

「うわー、桜キレイ。それに校舎も大きいー」私は思わず感嘆の声をあげる。

舞い落ちる桜の花びらの背後にそびえ立つ、小学校とは比べ物にならない大きさの中学校校舎は、私の期待と緊張ではりつめた心を震え上がらせるのに十分だった。

広浜中学校は、私の住む町[広浜町(ひろはまちょう)]のシンボルとも言える建物だ。

五階建てで、屋上から一望する広浜町は圧巻だと小学生の時に風の噂で聞いていた。

校門の前に着いた私は、こまりと自分の母親を待った。

入学式が始まるまで、まだまだ時間がありそうだったから桜を眺めながらまったりと一息をついた。

「すずねー!」しばらくボーッとしていると、聞き慣れた声が近付いてくる。

「こまり!」見知った顔が見えた途端、私の中の緊張が少しほぐれる。

「入学おめでとー!すずね!」相変わらず、子猫のような人懐っこい笑顔でこまりは私に抱きついてくる。

「こまりこそおめでとう!」私は思い切り、こまりに抱きつき返す。愛のある仕返しってやつだ。

だけれど、私はどこか照れくさくなってほんの少し身を引いてしまう。

ちょうど、こまりと目が合ってお互い見つめ合う形になってしまった。

「ねえ、そろそろ体育館に行こ!式が始まるよ!」こまりが私の手を引っ張る。

気が付けば辺りに人がいなくなり、体育館の方から賑やかな声が聞こえてきた。

私とこまりは手を繋いで体育館を目指して走っていった。