君がくれた涙は、さよならのために

「こら!何してるんだ!」


氷川くんが何かを言いかけたところで、怖そうな男の先生を筆頭に何人かの先生がバタバタとやってきた。


「瀬川さん!大丈夫?」

「え?あ、はい!大丈夫ですよ」


松本先生が座り込んでいた私に駆け寄ってくると、心配そうに顔を覗き込んできた。

男の先生たちに氷川くんは抵抗することなく大人しくついていき、氷川くんが私を振り返ることはなかった。


「女の子にまで手を上げるなんて…保健室に行きましょう」

「あの、本当に大丈夫です!ちょっと腕がヒリヒリするくらいで、大したことないですから!それに、氷川くんに殴るなら私にしろーって自分から言っちゃったので、氷川くんは悪くないし…」

「我慢しなくていいのよ?怖かったし痛かったでしょう?泣きたい時は泣いていいの」


ポンポンと優しく背中をさすられたが、私の目から涙が出てくることはなかった。

たしかに、怖かったし痛かった。

男の子って感じで力も強いし威圧感もすごいし、私なんかが真っ向から戦おうとしても無理なことがわかった。

先生たちが来てくれた時には少しだけほっともした。

私だって、できることなら泣きたい気分だ。