「暁月さんに絶対服従 ~隠れ家カフェの常連日記~」

 



 ある日の仕事帰り。

 いつもと違う道を歩いていた男は、ふと、足を止めた。

 足元を横切ったチャトラの猫を見て、彼女が好きそうな猫だな、と思ったからだ。

 その猫が歩いていくのをなんとなく目で追っていると、家と家の隙間が視界に入った。

 ――ん?

 この向こう、店みたいなものがある。

 細いその隙間から、灯りのともった雰囲気ある店と看板が見えた。

 その通路を抜けて出た突き当たりには、白い木造洋風建築の店。

 古い建物みたいだな。

 店を囲む低い木々は生垣のようになっていて、そこにライトアップされた看板があった。

『隠れ家カフェ』

 ……自分で言うとは斬新だな。

 男は白い砂利の敷き詰められた前庭に入ってみる。

 巨大なソテツの陰になっている古いガラス扉には『西山薬局』の文字。

 どうやら、薬局をリノベーションした店のようだ。

 店内は落ち着いた雰囲気で、灯りも暗め。

 カフェというより、バーのような雰囲気だ。

 厚みのあるどっしりとした木のカウンターが細長い店の大部分を占め、昔、薬を待つためにみんなが座るスペースがあったのかなと思われる窓際に、ちょっとだけテーブル席がある。

 男にしては少し長めの黒髪の、バーテンダーのような雰囲気の若い男がこちらを見る。

「いらっしゃいませ」

 男は色白で鼻筋の通った綺麗な顔をしていた。

 この間見た『滝本課長』とかいうのの次くらいに綺麗な顔をしている、と男は思う。