偽装結婚なんだから、花守にこだわらなくてもいい気がするんだが……。
そう思いながら、夜、滝本は家の廊下を歩いていた。
でも、相手を他の誰かにして、また一から慣れなきゃいけないのも面倒くさいしな。
寝酒でも呑むかとキッチンを覗くと、環奈が冷蔵庫に貼り付けるような感じに、なにかを広げてみている。
「なにしてるんだ?」
と声をかけると、
「わっ、課長じゃないですか」
と環奈は驚いたように言ってきた。
……俺以外のやつがこの家の中にいたら、大問題だろうよ、と思いながら見ると、環奈はリングノートのようなものを手にしていた。
「なにしてるんだ?
まさか、料理日記でもつけるとか?」
「……私がつけるのなら、晩酌日記じゃないですかね?
いえ、実は、この間、事業部のお手伝いしたとき、前のイベントの景品の残り物をいただいたんですよ。
なにかに使えないかなと思ってたんですが。
ここにかけて、それぞれが買ってきて欲しいものとか書いたらいいかなって。
……でも、勝手にこんなものひっかけて、景観が悪くなるとか言われないかな~? と今、迷ってたところなんですが」
「悪くなるな」
とあっさり言うと、そうですか、と環奈はすぐに、それを引っ込めようとした。
「それにしても、なんで、ノートをここにぶら下げようとしたんだ?」
「あ、これ、ノートというか。
全ページ、ホワイトボードなんですよ」
「そうだったのか」



