「暁月さんに絶対服従 ~隠れ家カフェの常連日記~」





 こんばんはーと言いながら、環奈と滝本は隠れ家カフェを覗いた。

「いらっしゃい」
と酒を作っていた西山が目だけ上げて二人を見る。

 西山は、くいくいと親指で後ろの酒の並んだ棚を示した。

 二人はカウンターから身を乗り出し、西山が指差したところを凝視する。

 酒瓶の隙間から茶色っぽい目が見えた。

 わああああっ、と二人は叫んで後ずさる。

「えっ? なになにっ?」
と他のお客さんたちも寄ってくる。

 奥の扉が開き、コックコートを着た新浜が現れた。

「えっ? ここ、コックさんいたのっ?」

「料理違う人が作ってたのっ?
 店長が奥で、ちょちょいと作ってきてるのかと思ったっ」

 開店当初から来ている常連さんたちも知らなかったらしい。

 新浜はぺこりと頭を下げていなくなる。

「人見知りなんで」
と西山はみんなに言った。

 だが、環奈は言う。

「昨日、結構しゃべってましたよ。
 むしろ、西山さんより饒舌に」

「慣れるとしゃべるんだ。
 人と関わるのが嫌いなんで、表には出てこない」

「……じゃあ、やっぱり、今までの料理はすべて、新浜さんが作ってたんですね?

 ってことは、私が結婚してくださいと言ってしまったのは、新浜さんということになりますよね。

 あのハンバーグ作ってくれる人と結婚したいので」

「……どんな基準だ」
と滝本が言うのに被せて、環奈は言った。