まだ次も行くというみんなとは別れ、まだ夜はこれからという感じの盛り上がりを見せている通りを環奈はひとり帰っていた。
すると、目の端をなにかがひらひらと動く。
振り返ると、道沿いにあるガラス張りのバルから誰かが手を振っていた。
「課長?」
道より高い位置にある店。
その窓際の席にいる滝本を見上げていると、入って来いという。
環奈は数段の階段を上がって店内に入り訊いた。
「課長帰ったんじゃなかったんですか?」
滝本は細いグラスに入ったビールを呑みながら言う。
「よく考えたら、夜道は危ないだろ。
騒がしいのが嫌だったから帰ったんだが。
まだ呑み足りなかったんで、呑みながら待っててやろうかと思って」
「あっ、ありがとうございますっ。
でもあの、私が気づかず通り過ぎたり、違う道を帰ってたりしたら、どうなってたんですか?」
「それはもう仕方がないだろ。
俺がひとりで呑んで帰るだけだ」
「そこは連絡くださいよ……。
あの、私も呑んでいいですか?」
環奈は滝本の前に座り、ワインのリストを見る。
さっきの店、料理はよかったのだが、呑み放題になっていたので、あまりいい酒がなかったのだ。



